海棠の花は朝の露に美しく

 

若かったころ、初めて露に濡れる海棠(かいどう)を見たとき、
その可憐とも妖艶ともいえる蠱惑的な表情に魅惑されたものだ。
物語のヒロインに例えるなら Beatrice か  Violetta というところ
だろうか。

 

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海 棠

 

「…まことに花の美しくあわれなる、これに越えたるはあらじ。

雨に悩める、露にうるほえる、

いづれ艶なるおもむきならぬは無し。

木瓜は侍卑(こしもと)なりとかや。

美しの姫君よ。

人を迷いに誘ふ無くば幸いなり」

露伴『花のいろいろ』より