岩船寺の仏像
JR奈良駅から自動車で30分ほどで来ることができる。山門前
には寺の名の由来になったという舟の形をした「石風呂」があ
り、訪れるひとを出迎えてくれる。
境内地の散策はあとに回し、まずは本堂内の阿弥陀如来にお参
四天王を四隅に従えて存在感を際立たせている。仏像は拝むも
のであり、美術品として鑑賞することは顰蹙をかうかもしれな
いが、浄瑠璃寺を参拝した後では感動する心は後退してしまっ
ている。
とは言っても阿弥陀さまの安らかなお顔を拝んでいると、普段
の仕事でのストレスなどの高ぶった気持ちが鎮まってくる。ま
た四天王の動的な彫りの鋭さ、深さも見事と思える。彩色もよ
く見ると残っていて、貴重な立像と言えるのではないだろうか。
とりわけ感動した仏像は普賢菩薩騎象像だった。もとは三重塔
に納められていたという。一木造りの彩色像が合掌して白象に
座っており、その女性的で優美な姿は藤原期の優作であるとい
う。彩色もよく残っていて、見るものに優しさという感情を思
い出させてくれる。
石段のある東側が正面である。室町時代の建立とされる。
塔は仰ぎ見るものであることが、この三重塔を見て思う。
三十九の坊舎があったころ、一山の僧を集めるために法螺貝を
吹き鳴らした岩という。
貝吹岩のある山頂から、北の方角を望めば南山城一帯が一望
できる。山なみの向こうには、遠く京都市がある。
境内のかたすみにある神社。商売繁盛、招福、結縁のご利益が
開山は行基と伝わる。
本堂は昭和六十三年に再建。
鎌倉時代の銘が線刻されている。
岩船寺を訪ねるのなら
岩船寺を訪ねたのはある年の三月下旬、建造物の写真を撮る
ことが第一の目的だったので若葉の繁る時期をはずしたので
は田んぼに水が引かれて田植えが終ったころが良いのではな
いだろうか。樹木の若葉、そして田んぼに植えられた苗の緑
が目にやさしく、また蛙の鳴き声を聞きながら、石仏を眺め
ながら、田舎道を歩く。これこそ至福のときに違いない。