奥上高地の紅葉 ― 涸沢・槍沢・徳沢・横尾に遊ぶ


“花と木と山が好き”とブログ名をつけているけど、ちっとも山の話が出て
来ないではないか、看板倒れでは、とお叱りを受けそうな気配がする。
なので次のシリーズまでの間、山のことを書いてみることにした。

上高地という言葉のあることを最近知った。奥三河、奥軽井沢、奥蓼科、

奥日光、奥吉野などという別荘地の名称のようなものもあることから、ち
っとも不思議ではないのかもしれない。時代とともに言葉も変化し、新し
い用語が出てくることは、十分にあり得ることだ。それならわたしも使わ
せてもらおう、とそんなことを考えた。

上高地とは、釜トンネルを出たあたり、大正池から河童橋を中心として明
神、徳沢あたりまでを称するのだろうか。
昔は徳本峠を越え、上高地へ入ったのだから、 「徳本峠入口」が上高地
玄関口だった。徳沢のもっと奥、横尾を中心として、涸沢カール、槍沢カ
ールあたりまでを上高地に含むのなら結構奥が深いけれど、奥上高地と言
うことならどうだろう。ついでに徳沢あたりまで奥上高地に入れてしまお
う。当然異論はあるだろうけど、こっちの事情(何の事情やら)もあるの
で、そういうことにする。




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河童橋より望む穂高連峰




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涸沢カールの朝

上高地バスターミナルから涸沢カールまでは、休憩を入れて6時間ほど
かかっただろうか。そこは期待した以上の別天地(絶景)だった。



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涸沢カールより望むモルゲンロート






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朝日を浴びる涸沢小屋


涸沢小屋の夜は長い ! ?
初めて泊まった山小屋が涸沢小屋だった。幾度も雪に押しつぶされ、
流されては再建された涸沢小屋。幾千人、幾万人の岳人が、ここから
巣立っただろうか。 

涸沢小屋でビールを飲みかわした初対面の面メン。
山男もいれば、観光気分でちょっと立ち寄った、という方もいた。
そこで知り合った方の紹介で北八ッの小屋に泊まったことがある。
その小屋では、個室を用意して頂き、お酒付き、湯たんぽ付きの
豪華な小屋どまりであった。
素性の知れないお酒、それに湯たんぽと個室代は無料だった。
一年前の素っ気ない態度とは天地ほどの差があった。
そこのオヤジの言うことにゃ、「彼とは寄り合いで一度会っただけ」
だと。
そうなの?
「俺の紹介といえば悪いようにはしないさ」とは言っていたけど…。


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ナナカマドの紅葉

 

 

 

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モレーン越しに北穂(?)と涸沢槍を望む

 

 

 

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ナナカマド

 

 

 

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鮮やかなナナカマドの紅葉を見たのは涸沢だった。
その昔、高名な山岳写真家の撮影した涸沢の写真に衝撃を受けた。
美しいとは言えないけれど、そのダイナミックな陰翳に感動した。
ナナカマドの美しい色は、数時間だけだという。
今年も鮮やかな色を見せてくれただろうか。 

 

 

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屏風の耳だろうか

 

 

 

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北穂高岳

涸沢カールへの登山道から撮影。いつかは登ってみたい北穂高岳である。
二三日テッペンの小屋(よくもあんな場所に!)で のんびりと山
の景色
を見て過ごしたいものだ。

 

 

 

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ダケカンバ(横尾谷の登山道で)

 

 

 

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槍 沢

 槍沢に沿って登れば、岳人あこがれの北アルプスの盟主・槍ヶ岳

 

 

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横尾尾根の紅葉

 

 

 

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横尾尾根

風の谷 槍沢
風の吹きすさぶ谷 槍沢であった。
ある年の秋、槍沢の紅葉はどうであろうか、と槍沢に遊んだことがある。
その日は台風が本州に近づいていたせいか、とても風の強い日であった。
槍沢は風の通り道なのだろう。ダケカンバが強風に煽られ まるで踊って
いるかのようであった。

 

 

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ダケカンバ踊る ! ?

 

 

 

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黄葉したダケカンバ


デジタル写真の色
いく度も涸沢や槍沢に通い、秋の盛りを楽しんだのは30余年前のこと。

山の写真を撮るには 中判カメラがいいだろうと、発売されたばかりの
NEW MAMIYA6 を購入した。もちろんレンズも3本購入。フィルムは、
風景によいという富士のポジを持って行った。

手ごたえは十分にあった。でも、あまりの派手な仕上がりに愕然とし
た。
いま過去に撮影したポジを見直してみると、デジタルの世の中になり
風景写真は派手めの絵が好まれるようになったのか、あるいは派手な
色に慣れてしまったせいか、さほど違和感を感じなくなってしまった。 

 

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孤高のカラマツ?

 

槍沢小屋の思い出
ある秋の日に槍沢を散策した夜、槍沢ロッジに泊まったことがあった。
夕食後小屋の書棚の中に一冊の興味ある題名の本を見つけた。たしか
北アルプスの秘境と言われた雲ノ平を紹介した『黒部の山賊』という
新書版の本だったような覚えがある(それまでは雲ノ平という山名す
ら知らなかった)。 著者は伊藤正一氏である。

黒部源流部には、山賊が集団で住んでいたというのだ(まるで水滸伝
梁山泊ではないか)。その山賊との「交流」と山で生き抜くチカラ
(技術)、山で経験した奇々怪々な出来事、その記述がとても面白い。

その伊藤氏の著した『黒部の山賊』を三十余年前に槍沢ロッジで読み、
いつかは雲ノ平へ遊んでみたいと思っていたのだ(翌年成就)。


 

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槍沢下流(下山の途中で)

 この辺りは大雨で川の様相が大きく変化する 。

 

 

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間もなく横尾(槍沢上流を望む)


上高地の紅葉は黄色が主役

上高地の紅葉は黄色い色が主流で赤い色は少ない。小学生の子どもが
上高地の紅葉を絵に描くと黄色に染まるという。横尾近辺の山々から
河童橋大正池のあたりまで落葉松(カラマツ)をよく見かける。晩
秋のころ、梓川沿いの落葉松は散り際が美しい。さながら金色のダイ
ヤモンドダーストを見るようである。



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梓川越しに前穂高岳を望む

 

 

 

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横尾付近の梓川とカラマツ

 

 

 

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カラマツ林の中を歩く

 

 

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カラマツの針葉

落葉松の葉の散るシーンを撮影したが、肉眼で見るようには写って
なかった。キラキラと金色に輝きながら散る針葉はとても美しい。

 

 

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晩秋の頃の梓川

 梓川の水量は少ない。河川敷にはケショウヤナギがランダムに生えている。
遠くに見える
雪を冠った高い山は常念岳

 

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黄葉したカツラの木

 徳沢付近の散策路では カツラの木が多く見られる。カツラの葉はハート形を
しているのですぐ分かる。

 

 

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トチノキ

トチノキの黄葉は逆光で見ると これまた美しい。実は食用になる。
マロニエ(西洋トチノキ)は街路樹として植栽され、実は日本の
トチの実とまったく形が同じである 

 

 

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徳沢キャンプ場


晩秋の徳沢
徳沢は上高地では好きな場所の一つである。特に晩秋の頃がいい。

宿は二軒あるし交互に泊まる。どちらかと言えば徳沢園の方が山
小屋の雰囲気がある。どちらも部屋は清潔だし料理も美味しい。
川沿いなので風呂もある。徳沢の奥、横尾山荘にも素敵な風呂が
あった(昔の話なので今では もっと良くなっているだろう)。

徳沢では早起きをして霜の付いた木々や下草の撮影にいそしむ。
昼は午後三時から三時半の光線の具合がいいので、わたしは そ
の時間帯をゴールデンアワーと呼んでいる。

 

 

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マユミの木

 

氷の華
晩秋のころ、徳沢あたりでは霜が降りると枯れた下草や木々の葉
が凍りつく。その姿をポジフィルムで撮影すると色温度が高いせ
いか寒々とした色合いに仕上がり面白い。ヘタにフイィルタで調
整すると途端に詰まらない絵になる。



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陽が射すとキラキラと輝くが その時間はとても短い

 

 

 

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徳沢付近より望む前穂高岳


 

・ 使用カメラ
  ZENZA BRONICA GS-1     NEW MAMIYA 6

フラットベッドスキャナ
 EPSON  GT-X970(主に湿度の高い梅雨時分に、集中的にスキャン)。
 CPに優れているが、慣れるまでは失敗の連続。マジ数千枚はやり直しを
 している。フイルムフォルダーの高さ調整、スキャン設定など試行錯誤
 の繰り返しで、 要領が分るまでには半年、一年はかかった。
 また、写真編集作業では、ゴミ取りに根気が必要。暇と根気の無い方に
 は あまりおすすめできません。
 専門業者にスキャンしてもらった方がいいかも ^^

・撮影年:1980年代
 一部の写真と文は、すでに別ブログで発表しています。ご了承のほどを。