伊勢物語

つひにゆく ー 在原業平 最期のひとり言?

昔、ある男が病気になって、気分がわるく死んでしまいそうに感じたので(こうよんだ)、死というものは人間 最後には行く道であるとは前々からきいていたが、それはずっと先のことで、きのう今日というさしせまったこととは思わなかったのに、気づいた時はも…

秋の夜は (別れても…)

昔ある男がいた。どのような事情があったのであろうか、その男が女の所に逢いに行かなくなってしまった。女には後にまた別の男ができていたけれども、前の男とは子供がいる間がらだったので、とくに愛情深く親密だということではないけれども時々たよりをし…

洛北二ノ瀬と「伊勢物語」を結びつけるって無茶ぶり?

小野小町が晩年を過ごしたと伝わる市原の里を後にして、次に向った先は貴船の少し手前にある二ノ瀬の里である。ここは“悲運の親王”として名高い(?)文徳天皇第一皇子の惟喬親王を祀っている神社のあるところなのだ。いつもなら叡山電鉄に乗り、二ノ瀬駅で…

あらたまの(去りゆく男を追いかけて) ― 伊勢物語

昔、ある一人の男が都を離れた辺鄙な田舎に住んでいた。その男は宮廷に出仕をするためにと言って、女に分かれを惜しんで出て行ってしまったまま、三年間も全然訪れて来なかったので、女は待ちあぐねてつらく思っていたので、たいそう心こまやかに熱心に求婚…

天雲は はるか遠くに(別れたあとの未練…) ― 伊勢物語

昔、ある男がいた。宮仕えしていた后のところで古参の女房と知り合って情けを交わしていたが、その女とはまもなく別れてしまった。同じ出仕先なので、女の目には男の姿が見えるけれども、男の方は女がそこにいるかとも思っていない風だった。そこで女は次の…

武蔵野は…遠くなりにけり ― 伊勢物語

武蔵野の面影(平林寺境内) 芥川龍之介の小説に『藪の中』というものがある。黒沢映画『羅生門』の原作といえるもので、原作を読んでない方でも三船敏郎主演の映画(モノクローム)は見ていることと思う。で、その映画は武蔵野の雰囲気のある場所で撮影され…

白玉か( 深窓の娘を盗み出す話) ― 伊勢物語

昔、ある一人の男がいた。とても自分の愛人にすることはできそうにもなかった女を、何年も求婚しつづけていたが、やっとのことで盗み出して、たいそう暗い時分に逃げてやって来た。 芥川という河辺をつれて行ったところ、女は草の葉の上にたまっていた露をみ…