京の藪医師-竹斎 遊女-吉野太夫を見初める(好色一代男風に)

姿なきあとまで後世に名を残した吉野太夫、前代未聞の遊女と伝わる。容姿、性格のどれ一つとっても文句のつけようがなく、情の深さと言ったなら海よりも深し?「都をば花なき里になしにけり吉野は死出の山にうつして」と灰屋紹益が詠んでいるのはその太夫の…

「美味しんぼ」と金平糖と西鶴と寺田寅彦と

だいぶ以前のことだけど、京都の老舗ジャズ喫茶"ブルーノート"で気持ちよくタンノイから流れる音楽に酔いしれていると、隣の席に座っている観光客らしい若い女性から金平糖(こんぺいとう)をいただいたことがあった。それは大粒の金平糖で、ポリエチレンの…

藪医師竹斎-伏見稲荷大社で嫁とバッタリ出会ったコワ~イ話(今昔物語風に)

前口上えー近年マスク美人てぇ言葉がはやりましたな。そして古いことわざに「よめ とほめ 笠の内」というものがあります。分りやすい文に直すと「夜目 遠目 笠の内」と書くんですな。今のご時世でいうなら「マスク美人」ということでっしゃろか。今日お話し…

「洛東芭蕉庵」再興の発起人 - 忘れられた俳人 樋口道立を探しに真如堂界わいを歩いてみた

秋晴れの一日、「洛東芭蕉庵」再興の発起人 - 樋口道立の墓が紅葉の名所真如堂付近にあると知り、居ても立っても居られなくなり探し歩いてみた。その顛末を報告してみたい。 真如堂へ至る北参道 「真如堂前」でバスを降り、先ずは紅葉の名所である真如堂(新…

松尾芭蕉と与謝蕪村ゆかりの寺 「洛東芭蕉庵」(金福寺)を訪ねる

比叡山西南の麓「一乗寺村」、今でいう一乗寺才形町に小さな禅寺がある。地元の者はその名を「芭蕉庵」(金福寺)と呼ぶ。コーヒーを売る小家もちかく、名物の丁稚羊羹を売る店も遠きにあらず。 白川の花売女? 寺への途中、むかし白川女だったと思しき花売…

ただのケチとは違う 京の大金持ち藤屋市兵衛(井原西鶴-世界の借屋大将)

江戸時代は元禄文化の花が開こうとした頃の話である。「世界で一番の金持ちはわたしだ」と大層自慢していた男が京の都におった。その当時は大坂もまだ田舎であったし、江戸は大きくはなったものの所詮新開地にすぎず、知識人の層といい、町人の財力にしても…

「平家物語」 ー 大原御幸 寂光院で平家一門と安徳天皇の菩提を弔う建礼門院徳子と涙の再会

朝焼けの東山 まだ夜の明けきらない未明のうち、都を立った後白河法皇一行が洛北市原、そして静原の里を越えて江文峠に着いたのは午後も遅い時間だったろう。わたしはと言えば、情けないことに電車とバスを使っても江文峠までニ日かかっている(若い頃なら一…

平家物語「大原御幸」の道をたどってみた2 ― 天武天皇が逆賊に襲われお隠れになった静原は城塞都市のよう?

静原の里 さて後白河法皇一行は、市原から大原寂光院へ向うのにどの道を通っていったのだろうか。『平家物語』ではそのことには何一つ触れていない。思うに上高野まで戻って高野川沿いに若狭道を大原へ歩くとなると倍以上の距離を歩くことになるのでその道は…

平家物語「大原御幸」の道をたどってみた ― 小野小町ゆかりの寺の巻

祇園精舎の鐘の声、 諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しからず、 唯春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、 偏(ひとえ)に風の前の塵に同じ… 「大原御幸」出立の朝 ー 写真左端が大原別所あたり…

「美味しんぼ」海原雄山のモデル 北大路魯山人を追う

かつて『美味しんぼ』という漫画があった(今でも続いているのかも)。大人向けの週刊漫画誌に連載されていた。わたしは第一回目からの読者であったが、主人公の山岡が同僚の女性と結婚したころから読まなくなってしまった。 西賀茂小谷墓地入口付近 その漫…

桐壺源氏って何のこと? 源氏物語の現代語訳 おすすめは?

はじめにドン・キホーテという名は子どもでも知っていることと思う。スペインの少しばかり古い小説に『ドン・キホーテ』という大人向け(!)の本がある。外国語大学の先生の話では、スペイン文学を学ぶ生徒でも最後まで読み通す者は滅多にいないそうである…

「平家物語」ゆかりの寺で渋沢栄一翁を思う

円山公園で紅葉を楽しんだあとは、すぐ近くにある「平家物語」ゆかりの長楽寺へむかった。この寺は壇ノ浦での平家と源氏方との決戦後、建礼門院様がはじめにお隠れになったところである。歴史はかなりあるようなのだ。 山門をくぐり抜け まずは本堂にむかう …

河上肇と櫛田民蔵と法然院と

京都大学の学生たちと芥川賞作家の話をするだいぶ以前のことだけれど、京大生数人と百万遍のとある居酒屋で一杯やったことがある。現役の京大生が芥川賞を受賞したころだ。カメラの話などをして小説のことや随筆の話などにいたった。そして京大の先生だった…

秋薔薇を見つめる

秋に咲く薔薇の花は どこか年齢を経た人間の顔を見ているようで 見ていて飽きない。芳香は ほのかに漂い、これ見よがしにきつい匂いを発しないところが良いのかもしれない。 枯れたようでいて枯れていない。 女優にたとえれば 今朝のTVに出ていた 加賀まりこ…

つひにゆく ー 在原業平 最期のひとり言?

昔、ある男が病気になって、気分がわるく死んでしまいそうに感じたので(こうよんだ)、死というものは人間 最後には行く道であるとは前々からきいていたが、それはずっと先のことで、きのう今日というさしせまったこととは思わなかったのに、気づいた時はも…

かつて小野郷と呼ばれた洛北 上高野の神社をめぐる ー 小野妹子と出雲氏の関係をさぐる

崇道神社一ノ鳥居 京都市の北部、高野というところに小野妹子や小野一族を祀った神社があると聞いていたので一度は訪ねてみたいと機会をうかがっていた。小野妹子は遣隋使として初めて隋に渡った人と知っていたし、子孫には小野篁や小野小町がいるので なん…

秋の夜は (別れても…)

昔ある男がいた。どのような事情があったのであろうか、その男が女の所に逢いに行かなくなってしまった。女には後にまた別の男ができていたけれども、前の男とは子供がいる間がらだったので、とくに愛情深く親密だということではないけれども時々たよりをし…

洛北二ノ瀬と「伊勢物語」を結びつけるって無茶ぶり?

小野小町が晩年を過ごしたと伝わる市原の里を後にして、次に向った先は貴船の少し手前にある二ノ瀬の里である。ここは“悲運の親王”として名高い(?)文徳天皇第一皇子の惟喬親王を祀っている神社のあるところなのだ。いつもなら叡山電鉄に乗り、二ノ瀬駅で…

小野小町の最期の地 補陀洛寺を訪ねてみた

京都駅から北へ十キロ余り行くと貴船や鞍馬のちょっと手前に“市原野”という集落がある。かつては山間の農村地帯であったが、いつの間にか山は削られ、田んぼや畑は工場や住宅地と化してしまった。平安の昔にはこの地は鳥辺野や化野、紫野などと同様に 人の亡…

秋雨に濡れそほつ花

芙蓉と百日紅は夏の花とばかり思いこんでいた。夏の強い日差しに似合うと決めこんでいた。しかし どうしてどうして、秋の雨に悩める芙蓉は、春の海棠にも劣らず「まことに花の美しくあはれなる、これに越えたるはあらじ」と思う。 萩には崩れた築地が似合う …

神戸の異人館街を散策し そして思ったこと

ちょっとばかり前のことだけど、「宣言」が解除された翌日に神戸市内を散策してきた。観光という目的もあったけれど、いまや記憶の片隅から消え去ろうとしている、あの大震災を経験して、その後街はどのように復興されたか、という名目をこじつけて…。 新神…

夏の名残り

さいた さいた と喧しくいうから何の花が咲いたのかと思えば、花ではなくて、本日も過去最多の新型コロナ感染者数だという。京都府では「自宅療養者」が昨日で3.000人余りだとか。東京都は京都の十倍の感染者数だから自宅療養者はその○○倍? あな怖ろしや。…

100歳のばあば が新型コロナに感染 ! ?

青天のへきれきと言うべきか、都内に住む御年百歳になる妻の母親が新型コロナに感染したようだ、と連絡が入った。十年前の大腿骨骨折では、 もしや寝たきり状態になるかと思わせたが、持ち前の不屈の精神とリハビリにより一人で歩けるまで回復した。今度ばか…

雨後の雲

黒部川源流域 雨後の雲の美しさは山にてこそ見るべけれ。低き山に居たらんにはなお甲斐なかるべし。名ある山々をも眼の前脚の下に見るほどの山にありて、夏の日の夕など、風少しある時、渓に望みて遠近(おちこち)の雲の往来(ゆきき)を観る、いと興あり。…

夏の暑さに負けず咲く百日紅

夏から秋にかけて咲く花で好きな花は木芙蓉(ふよう)かな。若い頃は木芙蓉の傍を通っても何とも思わなかったけど、年齢を重ねるとともに気になる木(木芙蓉)になった。可憐な白い花びらに何とも言えない趣があるし、八重もよいけれど一重が愛らしい。今日…

あらたまの(去りゆく男を追いかけて) ― 伊勢物語

昔、ある一人の男が都を離れた辺鄙な田舎に住んでいた。その男は宮廷に出仕をするためにと言って、女に分かれを惜しんで出て行ってしまったまま、三年間も全然訪れて来なかったので、女は待ちあぐねてつらく思っていたので、たいそう心こまやかに熱心に求婚…

天雲は はるか遠くに(別れたあとの未練…) ― 伊勢物語

昔、ある男がいた。宮仕えしていた后のところで古参の女房と知り合って情けを交わしていたが、その女とはまもなく別れてしまった。同じ出仕先なので、女の目には男の姿が見えるけれども、男の方は女がそこにいるかとも思っていない風だった。そこで女は次の…

武蔵野は…遠くなりにけり ― 伊勢物語

武蔵野の面影(平林寺境内) 芥川龍之介の小説に『藪の中』というものがある。黒沢映画『羅生門』の原作といえるもので、原作を読んでない方でも三船敏郎主演の映画(モノクローム)は見ていることと思う。で、その映画は武蔵野の雰囲気のある場所で撮影され…

白玉か( 深窓の娘を盗み出す話) ― 伊勢物語

昔、ある一人の男がいた。とても自分の愛人にすることはできそうにもなかった女を、何年も求婚しつづけていたが、やっとのことで盗み出して、たいそう暗い時分に逃げてやって来た。 芥川という河辺をつれて行ったところ、女は草の葉の上にたまっていた露をみ…

京都大原に「悲運の惟喬親王」の墓と棚田を訪ねる

渚の院(文徳天皇の離宮)にて桜を見てよめる 世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし 惟喬(これたか)親王と紀貫之、そして在原業平とはどのような関係にあるのか詳しくは知らないけれど、惟喬親王の母の姓は「紀」であったと覚える。それが…