つひにゆく ー 在原業平 最期のひとり言?

 

f:id:sasurai1:20211018142556j:plain

 

 

昔、ある男が病気になって、気分がわるく死んでしまいそうに感じたので(こうよんだ)、

死というものは人間 最後には行く道であるとは前々からきいていたが、それはずっと先のことで、きのう今日というさしせまったこととは思わなかったのに、気づいた時はもう今の問題だったのだなあ。


【原 文】
  昔、男わづらひて、心地死ぬべくおぼえければ、

  つひにゆく道とはかねてききしかど昨日今日とは思はざりしを

 

この歌は『伊勢物語』最終段に記載されている。「昔、男 初冠(ういかぶり)して、平城の京春日の里に……」で 元服まもない在原業平の物語は始まったのだけれど、いよいよ終ることになってしまった。最期の時が近づいたことを、業平の気持ちを率直にうたったのだろう。

 

伊勢物語』の 現代語訳を成した 阿部俊子は、この歌の解釈を、
自らの身の上に終焉を感じたときの〈ああ意外に早くとうとう〉
という率直な嘆声とみたい。
初冠で若々しく はじまった男の多彩な、人間らしく、才気ある、
みやびな姿は、しだいに年を重ね、ついに消えて行く。
すぎ去ってしまえばあっけないのが人生であろう。
と述べている。うーむ 今のご時世 考えさせられるなあ。


吉田兼好モンテーニュの死生観も東西の違い(仏教とキリスト教の違い)はあるけれど、意外と似通っていて面白い。女性の作家で、兼好や長明やモンテーニュのような死生観、人生観を書いた人をわたしは知らない(たまたま知らないだけかも)。

 

chikusai.exblog.jp

 

chikusai2.hatenablog.com

 

sasurai1.hatenablog.com